秘密/東野圭吾を読んで~愛する人を想うということ~

ー手に取った理由ー

以前闇雲に本を読んでいたときに出会って良いと思った本です。

紹介したくて再度読んで感想にまとめてみようと思いました。

ーあらすじー

妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。その日から杉田家の切なく奇妙な“秘密”の生活が始まった。(本書より引用)

ー著者ー

東野圭吾

1958年、大阪生まれ。大阪府立大学電気工学科卒。エンジニアとして勤務しながら、1985年、『放課後』で第31回江戸川乱歩賞受賞。1999年、『秘密』で第52回日本推理作家協会賞受賞。著書に『同級生』『変身』『分身』『鳥人計画』『むかし僕が死んだ家』『パラレルワールド・ラブストーリー』『天空の蜂』『毒笑小説』『名探偵の掟』『悪意』『探偵ガリレオ』『白夜行』『予知夢』『片想い』等があり、幅広い作風で活躍している(本書より引用)

ー全体を通してー

~愛する人を想うということ~

「ドラえもん」で「人生やり直し機」という秘密道具を使ってのび太が今の知能のまま幼子に戻って自分の人生やり直す話がある。

幼いときは天才と言われる。

しかし、「褒められてばかりいると努力を怠り今よりもっとだめな人間になってしまうぞ」とドラえもんに説得されて現代に帰るという話だ。

本書はこの「人生やり直し機」が起こす現象が実現したらどうなるのだろうということをリアリティを持って描いた本だと言える。

話としては突拍子もないSFだがその部分を受け入れてしまい(読んでいれば自然に受け入れられると思う)さえすれば主人公・平介と妻・直子(藻奈美)の生き方・考え方が平介目線で丁寧に描かれており感情移入しやすい話になっている。

直子(藻奈美)が成長するに従って平介との溝は深まっていく。

お互いがお互いの事を思っていることは間違いのない事実なのに。

終盤になるにつれて夫婦としての関係が崩れていき直子は藻奈美としての人生を歩んでいく。

平介視点から見ると理不尽にも思えるけど、それ以上に直子(藻奈美)目線に立ったときの喜びとか切なさとか、客観的に見れば仕方ないと思わせる気持ちも生まれる。

終盤で直子(藻奈美)に変化が訪れる。

最後の数ページで伏線が回収される。

本書では描かれないが読後、お互いがお互いの幸せのために苦渋の決断をしたのだと気づき、お互いの愛の深さに感動する。

私は読後、真っ先に直子に感情移入してしまった。

その後、主人公の平介にも感情移入してみるとそれはそれで楽しい。

異なる視点から一つの作品を見ることで作品の深みを感じる事ができるようになっている。

終盤の構想に心動かされる。

愛の形は人によって異なる、もちろん環境にも左右される。

本作のような特異な環境に置かれた平介・直子の愛の形が描かれている。

ー感想ー

~理系を思わせる細かい描写と裏付け調査~

主人公の働いている会社のビグッド(語源が大木)って完全にブリジストン(語源が橋石)と同じだ。

モデルにしたのかな。

車関係というところも一致しているし。

主人公の職場内容など細かいところの描写がさすが理系という感じがする。

インジェクタとか。

同じ理系としては親近感わくんだよな。

バス運転手の残業時間など、具体的なデータも多い。裏付け調査もきちんとしているのを感じる。

リノニュームの床に額を押し当てた(本書より引用)

という表現があったフローリングの種類らしい。

ここまで具体的にかくものなんだ。

それとも知識として持っているのだろうか。

~ミステリー要素もきちんとある~

ミステリーの要素も詰め込まれている。

事故を起こしたバス運転手がなぜ自ら進んで過剰な超過労働を行ったのかを調査している過程とその真相が描かれている。

~脳の違いが決める向き不向き~

直子として生きていたときは数学が苦手だったのに、藻奈美の体で同じ事を勉強するとすんなり頭に入るという描写がある。

主人公はそれを「脳の構造の違いではないか」と指摘している。

確かに男性と女性でそれぞれ脳の構造が異なり得意分野が異なるように、個人によっても脳の作りが異なるのだからで得意なこと・不得意なことが異なるのであろう。

理系を父に持つ藻奈美は理系科目が得意な脳だったのかもしれない。

でもだとしたら、学校の授業で同じ話を聞いて、同じ問題集を解いても理解できるかどうかは個人の脳に依存することになる。

端的言えば生まれ持っての才能という事になるのだ。

興味は才能に勝ると言うが才能があることの物事のほうが理解が早く興味も長続きしやすいと思う。

遺伝子からその人の才能を見抜いてそれに特化して育てるというのは間違いではその子のためにも人類全体のためにも間違いではないだろうなと感じた。

この考えに対するアンチテーゼとし東野圭吾の「カッコウの卵は誰のもの」という作品がある。

何事もバランスが大事。個人の意思が一番に尊重されることが重要なのだなと思わせてくれる。

~世の中の難しさ~

事故の加害者側の家族も描かれる。憎む側、憎まれる側という単純な対立関係にならない世の中の難しさのようなものも感じる。

~自立できる女性へ~

直子(藻奈美)が勉強して、いざとなったら自立できる女性になりたいと話し、勉強に邁進する。

直子は今まで旦那に頼ってきたことを情けないと思ったことがあると話していた。

でも直子の時代は女性の社会進出もまだ進んでおらず家庭に入ることが当たり前の時代だったのかもしれない。

時代が進むにつれて、生き生きと活躍する女性を頻繁に目にする機会が増えたからこそ自分のことを情けないと思ったのではないだろうか。

小説土佐堀川で描かれている時代から女性の自立が進んでいる証だなと思う。

人生をやり直したからこそ身に染みて自分が惨めだと感じるのだろうが、時代背景にも影響を受けたのだと思う。

今の時代に生きる私としては、自分も女性だったらそうなりたいだろうし、そんな女性をパートナーに選びたい。

実力はなくてもいいからそんな気概のある人がいいなと妄想するのです。

まあ、そんな偉そうなこと言える立場ではないんですがね…。

ーまとめー
最後の数ページで伏線が回収される。

本書では描かれないが読後、お互いがお互いの幸せのために苦渋の決断をしたのだと気づき、お互いの愛の深さに感動する。

私は読後、真っ先に直子に感情移入してしまった。

その後、主人公の平介にも感情移入してみるとそれはそれで楽しい。

異なる視点から一つの作品を見ることで作品の深みを感じる事ができるようになっている。

終盤の構想に心動かされる。

東野圭吾さんの著書で私が一番のおすすめは「白夜行」です。
感想も掲載しているのでよかったら読んでみてください。

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