海賊と呼ばれた男(上)(下)/百田尚樹を読んで ~自分が正しいと信じたことを信じ抜く力の重要性~

手に取った理由

映画化もされるなど有名。

永遠の0を読了しているので関連する百田尚樹さんの本をもっと読んでみたいと思った。

本屋大賞受賞(2013年度受賞)しているということもあり興味を持った。

―あらすじー

戦前戦後を通して国岡鐵造という石油販売会社を経営した男の生涯を描いた作品。

出光佐三という出光興産の創業者の実話を一部個人名など変えて小説にしている。

国岡商店が苦難を乗り越えてどんどん大きくなっているのを見るのは楽しかった。

4部に分かれている。

第1章.太平洋戦争後の国岡商店の復興

第2章.鐵藏の幼少期からの成長と、国岡商店の立ち上げ。戦前まで

第3章.第1章の続き。イランから石油を輸入する話。

第4章.第3章の続き。国岡商店のその後を描く

―総評―

~自分が正しいと信じたことを信じ抜く力の重要性~

この本で描かれているのは自分が正しいと信じたことを信じ抜く力の重要性だと思う。「人間尊重」という会社経営の姿勢を鐵造は捨てなかった。その信念が鐵造を成功へと導いていく。その信念が本質に迫っていればいるほど力を発揮すると思うのだ。

ホンダの基本理念にも人間尊重が含まれる。世界に誇る企業が共通の理念を持つというのは興味深い。

congerdesign / Pixabay

―感想―

~考え方の多様性を認めるべき~

確かに鐵造の言う「人間尊重」はすばらしいと思う。

人間は信頼されてこそ本来の実力を出すことができるというものだ。

でもそれは性善説に振り切れている。

出勤簿がないというのはその最たる例だろう。

今だったら許されないが…そのような信念に基づいた会社運営は一つの理想だろう。

一方で人間は必ずサボるものという意見もある。

そのために契約があるのだし働いている方からみたら経営者だってどんな人か信用できない。

お金はたくさんもらいたいし、できることならサボりたい。

そんな思いのある人間も決して少なくないだろう。

性悪説に基づいて成功した会社もある。

大半の企業は性悪説と性善説のバランスをとって成功しているのではないだろうか。

あくまで本書で描かれている国岡鐵造という人物の価値観は数多あるなかの価値観の一つだとわかっていて欲しい。

~理念ではなく生き方にこそ共感して欲しい~

鐵造のいうことは聞こえがいい。

加えて実際に成功した人物だ。

だから周囲は彼を認めるし賞賛する。

人はその中に成功者に共通するマインドを見ようとする。

でも、「人間尊重」という理想については、あくまで、「あなたはそうだったんでしょ」ということに過ぎない。

3章でイギリスとの国際関係を修復しようとしている日本の政府を傍目に、イギリスとの関係が悪いイランと国岡商店が石油の貿易をしようとしている描写がある。

このとき日本政府は「なんてことをしてくれるんだ。このままイギリスとの関係が悪くなったらどうしてくれるんだ」。

と慌てる場面がある。

一方鐵造は日本国民とイラン人のためと信じて貿易に挑む。

私はこの2つの価値観からの物の見方が描かれているのが好きだ。

さらに巻末の解説で堺屋太一氏は鐵造と対立していた、官僚や世界規模での石油の統制にも自分たちの正義があるのだと説明してくれている。

鐵造が100%正しくて他が100%間違っているということは絶対にないのだ。

鐵造が行動を起こさなければもっと状況がよくなるかもしれない「もしも」の世界は必ず存在している。

実際鐵造もその可能性に晩年思い至っている。

この本を読んでいると鐵造目線でのみ読み進めるので鐵造が正しいというような錯覚をしてしまいがちだ。

したがって、私はこの本の書かれている理想に感化されるのは間違いだと思う。

ましてや、今の日本を嘆くことは間違いだと思う。

重要なのは鐵造のような信念を持って物事に取り組んだ人がいるということ。

そして多くの人の気持ちを動かし行動させたということだ。

信念の中身ではなく自分の中で納得した理想を追い続ける生き方にこそ感動してほしい。

~みんな特徴があるから世の中おもしろい~

私自身、人間は70億人もいるのだからいろんな思想や考え方を持っていた方が楽しいと思う。

1人くらい変な考え持った人がいても大勢には影響ないし(周りの人は困るかもしれないのである程度折り合いはつけなければならないけれど…)。

頭ごなしにこうじゃなきゃだめというのが嫌いだ。

といっても自分の意見だけは持つべきだと思う。

~満州での機械油の試験が熱かった~

寒冷地である満州の奥地で、外国産の油と鐵造が配合した油が凍るかどうかの試験がある。

この話が個人的には一番好き。

プロジェクトXっぽい。

~日田重太郎に憧れる~

主人公が商売を始めるときに金銭面で大きな手助けをした日田重太郎という人が描かれている。

鐵藏を見込んで多額の投資をするのだが、なかなか鐵造は成功しない。

それでも構わず私財を投げ打って投資を続けて、私財を失うばかりか、親類から嫌われて地元に帰れなくなってしまう。

でも、自分が見込んだ男が大成するのを見ることができた日田は幸せだったと思う。

自分もそのような人物を見る目のある人になりたい。

むしろ日田が信じ続けたからこそ鐵造は成功したのかもしれない。

私は鐵造よりも日田みたいな人物になりたいなぁ。

~工場建設の計画概要も聞かずに10ヶ月で完成させろというのは無茶ぶりすぎる~

技師長が2年かかる内容をろくすっぽ技術的な内容を聞かずに10ヶ月で仕上げろという。

結果としてできたのはいいが、10ヶ月で完成できるという根拠は「大企業の奢った気持ちがなければできると思っていた。」。

というものだ。

結論だけ聞けば美談(のようにも見える)。

だが言われた側にとってはとんでもない話だ。

必死にがんばることの大切さを語ることはよいがデータに基づいた目標設定をして欲しいものだ。

根性で頑張れではブラック企業と同じだ。

それで成長することもあるかもしれないが、それは強者の理論だろう。

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