サクリファイス/近藤史恵を読んで~主人公の生き方と勝利の尊さ~

ー手に取った理由ー

テレビでロードレースのプロ選手であるカンチェラーラの紹介をしているのを見て、ロードレースに興味を持った。

カンチェラーラは凄すぎて「宇宙人」と呼ばれているらしい。

本屋大賞2位(2008年度受賞)していることも選んだ理由の一つ。

―あらすじー

エースのために尽くすという事にやりがいを感じ、プロのロードレーサーとしてロードレースに打ち込む主人公、白石誓。

アシストとしてチームに貢献することを目標としていたはずが、日本の大会で予期せぬ活躍を見せ一躍エース候補に躍り出る。

しかし、現エースの石尾には有望選手を再起不能にするという黒い噂がつきまとう。

そんな中、参戦したヨーロッパのレースで事件が起こる。

真のサクリファイス(犠牲)は誰なのか。

サスペンスと同時に、ロードレースに関わる人々の心理を通した主人公の成長を描いている。

大藪春彦賞受賞作

―著者―

近藤史恵(こんどうふみえ)

1969(昭和44)年大阪府生れ。’93(平成5)年『凍える島』で鮎川哲也賞を受賞し、作家デビュー。2008年『サクリファイス』で大藪春彦賞を受賞

―全体を通して―

~主人公の生き方と勝利の尊さ~

ロードレースという世界は特殊だ。

数人のチームとして参加し、そのチームの中でアシストと呼ばれるメンバーは自分のためではなくエースを勝たせるために出走する。

エースが勝つことがチームとしての勝利なのだ。

しかし、自分の名前が記録に残ることはない。

それ故にエースには勝たねばならない責任がある。

いくつもの選手の、「自分が勝ちたい」という思いを踏み台にしているのだから。

自身が勝利することを恐れ、アシストに徹する主人公と勝利する責任を背負って戦うエース。

主にこの2つの立場から物語は描かれている。

事件の裏に隠された真意と、そこから成長し、勝利の尊さを知る主人公が描かれる。

青春小説としてもサスペンスとしても楽しめる小説。

個人的にはロードレースの駆け引きに目を奪われた。

―感想―

~ロードレースのルール・奥深さについてよく分かる~

マラソンやF1のような出場選手個々が勝利を狙うスポーツと比べ、チームを組み、エースのみの勝利を目指すロードレースの世界は大きく異なる。

加えてロードレースはチームプレイであるが故に戦略や駆け引きが重要である。

ロードレースの醍醐味と思える駆け引きが、本書では初心者に分かりやすく、同時に手に汗握る緊張感も表現されている。

~自ら進んで犠牲となる主人公の心理~

主人公はロードレースの世界に居場所を見つける。

主人公は高校時代インターハイ優勝を経験し、オリンピックを狙えると言われた選手だったが、自分が勝つことによるしがらみや勝つ事への責任に嫌気がさして陸上をやめる。

そして、選んだのがロードレース選手だった。

ロードレースのテレビ放送で、勝利よりもフェアプレイや自分がチームの勝利のための犠牲になろうとする姿に触れ、ロードレースなら責任やしがらみから逃れて、走ることだけに全力を注ぐことができると考えたのだ。

そこで、主人公は勝利を課せられたエースではなくエースのために犠牲となるアシストとしての道を選ぶ。

そんな主人公の独特の心情に私は感情移入してしまう。

素直に見れば自分の為より他人の為のいい人だが、要は自分が矢面に立って傷つきながら前進していくことが怖いのだ。

勝ちたいと願って努力している人には失礼かもしれないが、勝つことに向いていない人、もしくは勝った後の世界を見ることで勝つことに嫌気がさす人だっている。

そんな主人公だが転向したロードレースの世界でも徐々に頭角を現してくる。

「なんで、主人公ばかりうまくいくんだ」という気持ちもなくはない…

主人公が、自分がアシストに徹する理由を同期のチームメイトに話した後、以下のように考える文がある。

ときどき、思うのだ。自らの身を供物として差し出した月のうさぎの伝説のように、自分の身体をむさぼり食ってもらえれば、そのときにやっと楽になれるのではないかと。だが、現実にはそんなことは起こりえない。むしろそれは、ひどく尊大で人に負担を強いる望みだ。だれも他人の肉を喰らってまで生きたいとは思わないだろう。月のうさぎは、美しい行為に身を捧げたいわけではなく、むしろ、生々しい望みを広に押しつけただけなのだ(本書より引用)

自分のためではなく誰かのために生きたいと考える主人公の気持ちを端的に表した文だと思う。

同時に、より広いステージで戦えるチームに移籍したいというような野心はきちんと持っており、人間味あふれる部分も描かれている。

~フレームメーカーってどんなところがあるのだろう~

主人公が所属するチームオッズの母体は国産自転車フレームメーカーらしい。

どこかモデルになったところがあるのだろうか。

自転車関係のメーカーと言えばぱっと、シマノが思い浮かんだがシマノはパーツのみでフレームを作っていないようだ。

日本のロードバイクメーカで調べてみると色々出てきた。

ブリジストンやパナソニック等有名メーカーも作っているらしい。

オッズに似ている名前のメーカーはなかった。

ーまとめー

ロードレースのルールとおもしろさを十分に伝えてくれる内容。

主人公の独特の人間性と成長も見所。

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