目次
―手に取った理由―
先日読んだMOMENTの続編ということで読むことにしました。
1作目MOMENT
2作目WILL
3作目MEMORY
と、関連作がある。
本作は2作目。
―あらすじ―
11年前に両親を事故で亡くし、家業の葬儀店を継いだ森野。29歳になった現在も、寂れた商店街の片隅で店を続けている。葬儀の直後に届けられた死者からのメッセージ。自分を喪主に葬儀のやり直しを要求する女。老女のもとに通う、夫の生まれ変わりだという少年―死者たちは何を語ろうとし、残された者は何を思うのか。ベストセラー『MOMENT』から7年、やわらかな感動に包まれる連作集。(本書より引用)
MOMENTの主人公神田の幼馴染である森野を主人公とした話。
MOMENTから7年後を描いている。
短編4つ+エピローグ・プロローグで構成されている。
短編は時系列順に並べられており、主人公(森野)が関わった葬儀とその周囲の人々の話。
最終的に主人公が今後歩む道を決めるまでを描いている。
私もWILL時点の神田や森野と近い年齢なので、いい加減自分も自分の進む道を決めないといけないなと思わされた。
以下、各章と概要
~空に描く~
葬儀の直後に死んだはずの人から絵が送られてくる
~爪痕~
自分を喪主として葬儀を再び行おうとする女性
~想い人~
葬儀から15年後、老女のもとに通う、夫の生まれ変わりだと自称する少年
~空に描く(REPRISE)~
第1章~空に描く~の後日譚
―著者―
本多 孝好(ほんだ たかよし)
1971年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。1994年、「眠りの海」で第十六回小説推理新人賞を受賞し、作家デビューする(本書より引用)
―全体を通して―
~今を生きる人に力をくれる~
死者の存在の大きさを考えさせてくれる話。
人は死んでも、その想いや記憶は消えることがない。
遺された人は個人の想いを受け止めて生きていく
主人公は謎を解明する過程で、故人が込めた思い、遺族や周囲の人が受け止めた想いを知っていく。
死者の想いは、遺された人々に引き継がれて連綿と続いていくのだと思わせてくれる作品。
ー感想ー
~第1・4章~空に描く~:感じ方は人それぞれ~
故人の想いをどう受け止めるか、それは人にとって異なる。
それ故に誤解が生まれ故人の想いや記憶は時として遺族やその周囲の人々を苦しませる。
主人公が故人の想いを正しく伝えるための手助けをする話。
登場人物が主人公に告げる言葉がある。
「冷たい人間が偉そうに見えるのよ。そうやって周囲に壁を作って、一人の世界に閉じこもっているように見えたって、結局、あんたはその世界で愛情を知っているんだろうって。そうじゃなきゃ、そんなに冷たくなれるはずがない。周囲にそんなに無関心でいられるわけがない。どんなに一人で立っているように見えたって、あんたの根っこが生えているその土の中には、誰かからの愛情がふんだんに撒かれているんだって、そう思うのよ。それがはっきりわかるの。だから私は」森野が大嫌いだった。(本書より引用)
後に登場人物はこれが本心ではなかったことを告げるが、一瞬このセリフは自分にも言われているんじゃないかと思った。
でもこの思いの裏には自分が特別不幸だという思いがある。
ただの嫉妬だ。
自分だけが欲しいものが与えられていないと思っているんじゃないか、欲が深いんじゃないのか。
冷たい人間は少ない愛情で満足したのかもしれないじゃないか。
発言者の気持ちは分かる。
しかし、他人を責める前に、自分が本当に不幸だったのか、幸福が足りていなかったのか考えてみて欲しい。
世の中そんなに悪いことばっかりじゃないと思う。
主人公は謎を解明する過程で、故人が込めた思い、遺族や周囲の人が受け止めための手伝いをしていく。
~第2章~爪痕~:犯人の考えは正しい~
この謎には犯人が存在する。
犯人の予想は正しいと思う。
人が無意識に人を傷つける典型だなと思った。
本書でも述べられているが、犯人は他人のためというふりをして自分のために行動している。
MOMENTの2章FACEに似たものを感じる(FACEの登場人物は行動原理が自分のためということを自覚している)。
どちらも褒められたことではないが人間らしいなと思った。
~第3章~想い人~:少年の内面を描く~
葬儀から15年後、老女のもとに通う、夫の生まれ変わりだと自称する少年。
少年の生き様を見る作品。
森野葬儀店のメンバーを通して少年の生き様がありありと浮かんでくる構成になっている。
―まとめ―
人は死んでも遺された人に何らかの影響を与える。
その影響は遺された人の立場や気持ちによって変化する。
様々な人の想いを知ることで心が温まる作品。
1作目MOMENT
2作目WILL
3作目MEMORY
と、関連作がある。