目次
―手に取った理由―
バイト先の知り合いに薦められたから読みました。
映画化もされるみたいですね。
―あらすじー
この優しい物語をすべての働く人たちに
ブラック企業にこき使われて心身共に衰弱した隆は、無意識に線路に飛び込もうとしたところを「ヤマモト」と名乗る男に助けられた。
同級生を自称する彼に心を開き、何かと助けてもらう隆だが、本物の同級生は海外滞在中ということがわかる。
なぜ赤の他人をここまで気にかけてくれるのか? 気になった隆は、彼の名前で個人情報をネット検索するが、出てきたのは、三年前に激務で鬱になり自殺した男のニュースだった――
働く人ならみんな共感! スカっとできて最後は泣ける”すべての働く人たちに贈る、人生応援ストーリー”
主人公が退職を決意するまでの話。
―著者―
北川恵海(きたがわ えみ)
大阪府吹田市出身。第21回電撃文庫小説大賞“メディアワークス文庫賞”を『ちよっと今から仕事やめてくる』で受賞しデビュー
―全体を通して―
~一度しかない人生、自由に生きたい~
僕も主人公の隆に同意する。
楽しくない仕事なんかやるべきじゃない。
隆と違うのは昔の会社がそんなに悪いところではなかったということだ。
自分は会社についていけなくなって辞めた。
でも、それは自分の実力がなかったためだと自覚している。
会社にも非はあると思うがそれはみんなある程度耐えていることだ、それに耐えているからこそ給料をもらえているのだと思う。
私はモノづくりで世の中に貢献したいとずっと思ってきた。
前職はやりがいもあり日々は充実していた。
しかし、ある日ダウンしてしまった過労とストレスのためだ。
他の職場で自分より過酷な環境で頑張っている人もいるのだから自分が弱かったのだと思う。
自分の実力不足だった。
私は一度転職を試みたことがある。
でもあっという間に辞めてしまった。
なんのために仕事をするか分からなかったからだ。
仕事内容よりも体裁を求める職場が好きになれなかった。
担当した職種の影響も大きかったんですがね…
でも最初に勤めた会社が寛容だったのは確かだと思う。
新卒で入った会社だからおおめに見てもらえたというのもあるかもしれないが。
二回目に勤めた会社が世の中の標準的な会社であろうことは予想できた。
仕事以前に態度や服装をキチンとするのが常識だ。
その時思ったのだ。
自分は働くことは向いてないのではないか、と。
本来の働く目的であったモノづくりで世の中に貢献することは自分より優秀な誰かがやってくれる。
それなら自分にしかないもの、自分の考えを世の中に発信してみたい。
そうして始めたのがこのブログだ。
このブログを読んでいただいて本当にありがとうございます。
もちろん仕事はしなければならないがしばらくは休憩する。
お前は、社会ってもんをわかってねーんだよ!こんなところで挫ける奴はなあ、人生何をやっても駄目に決まってんだよ。(本書より引用)
耳が痛い。
挫けずに頑張ってきた人が会社に残って、死にたいと思いながら歯を食いしばって、社会を支えている。
それは分かる。
でも向いてない人もいる。
それに耐えられない人もいるのだ。
それを切り捨てるのは残酷すぎる。
主人公の発想は社会を知らない人の発想だ、それを乗り越えてみんな一人前の社会人になっていく。
そもそもこんなに離職率の高い会社が、いつまでも持つと本当に思いますか?我慢に我慢を重ねて、倒産して退職金も貰えないんじゃ、後悔してもしきれませんよ。おかしいことはおかしいってちゃんと言わないと、会社は成長しません。「俺の時はこうだったから、お前もこうしろ」ではなくて、きちんと時代に合わせて変わっていくべきなんです。人も、制度も、変わるべきなんです
主人公の会社批判はもっともだ。
でも生き残っている人は変化に適応すると同時に過去の習慣にもうまく馴染めた人が多いはずだ。
「俺の時はこうだったから、お前もこうしろ」は馬鹿にできない。
学ぶべきところはあると思う。
変化すべきところもあるが変わらない方がよいこともきっとある。
はっきり言ってどんな環境でもうまくやれる人はうまくやれる。
本当に出来る人間っていうのは、どんな環境にいてもできるんだよ。社会に出てから一番重要なのは、体力でも、我慢強さでもない。頭のよさだ。どんな人とでもやっていける適応能力だ。要は「人間力」がある奴が一番強いってこと(本書より引用)
主人公の隆が学生時代に述べた言葉だ。これは正しいと思う。
本当に出来る奴はどんな環境でもうまくやれる。
ただそれは本当に出来る奴だ、何かが圧倒的に出来る奴じゃないとだめだ。
そんな奴は世の中の本当に一握りしかいない。
しかもそんなできるやつでもその人のレベルに見合った悩みを抱えている。
隆は自分がその一握りではないことを自覚すべきだった。
きっと隆が文中でその時の自分を捕まえて言ったことを否定したいと考えたのは偉そうなことを言った自分を回想して恥ずかしいと思ったんだろうな。
結局、主人公は特別優秀でもない一般人で、少しばかりいい人だったから会社の考え方に馴染めなった(本作の主人公がいた会社はいい人じゃなくても馴染めなかったかもしれないが)。
それなら会社を辞めていいと思う。
私も意図してはいなかったが、今は無職だ。
一度しかない人生を存分に楽しみたい。
~でも耐えたからこそ得られたものもあったかもしれない~
でも、自殺したら終わりだが、「なにくそ」と思って頑張れる人にも見えてくるものがあると思う。
私も途中でリタイアしたからそれが何かはわからない。
これから学んでいくのかもしれない。
部長の人生だって馬鹿にはできない。
―感想―
~重要なのは自分の置かれた状況で最善を尽くすこと~
社会にでて会社を辞めるのは恥ずかしいことではないと思う。
確かに正社員の職を一度辞すると再就職をするのは簡単ではない。
でも、自分に合わないところで我慢するのが合わない人もいる。
自分が活躍できるポジションが何かを知ることも重要だが全ての仕事を考慮することはできないからみんな、自分の知っている範囲で大体のところで妥協する。
おすすめは新卒で大企業に入社して、自分に合わなかったら配置転換を申し出ることだ。
主人公である隆も配置転換を願い出ればまだ会社に入れて理想に近い仕事ができる可能性がある。
なんにしても死ぬよりはいい。死ぬくらいなら会社を辞めるくらい全然大したことじゃない。
この日本、人間一人くらいならなんとか生きていける。
―まとめ―
会社でうまく成果を出せない主人公の隆、自殺を考えるが「ヤマモト」に助けられる。
隆は「ヤマモト」に心救われる一方で「ヤマモト」もまた心に傷を抱えていた。
現代社会に疲れた人の心を気分爽快に、そして癒してくれる作品。