MEMORY/本多孝好を読んで~作を重ねるごとに登場人物の人間性が見えてくる~

―手に取った理由―

先日読んだMOMENT・WILLの姉妹作ということで読むことにしました。

―あらすじ―

葬儀店のひとり娘に産まれた森野、そして文房具店の息子である神田。同じ商店街で幼馴染みとしてふたりは育った。中学三年のとき、森野が教師に怪我を負わせて学校に来なくなった。事件の真相はどうだったのか。ふたりと関わった人たちの眼差しを通じて、次第に明らかになる。ふたりの間に流れた時間、共有した想い出、すれ違った思い…。大切な記憶と素敵な未来を優しく包みこんだ珠玉の連作集。(本書より引用)

MOMENTの主人公である神田。

WILLの主人公である森野。

二人の姿をその周囲にいた人々の視線から語る短編集。

今までの二人の主観で描いた話とは異なる2人が読める。

以下、各章と概要

~言えない言葉~

神田・森野が中学3年生のときの事件

~君といた~

神田が高校3年生の時の話

~サークル~

森野が高校1年生のころと28歳の頃

~風の名残~

神田のアメリカ滞在時期の出来事

~時をつなぐ~

2人の今後

―著者―

本多 孝好(ほんだ たかよし)

1971年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。1994年、「眠りの海」で第十六回小説推理新人賞を受賞し、作家デビューする(本書より引用)

―全体を通して―

~作を重ねるごとに主人公の人間性が見えてくる~

神田の恋心を描いている話が多い。

神田は中学3年生の頃から森野のことが気になっていて、不器用ながらも森野のことを思い続ける。

森野が神田を想っていると感じるエピソードもある。

WILLの終盤でも描かれるが、森野は最終的に神田を受け入れる。

神田はこんなにも森野のことを思っていたのか、MOMENTを読んでいた時はただの幼馴染のように描かれていた。

作品を重ねていくうちに登場人物も成長していくのだなと感じた。

神田が森野を特別に思うようになったのは森野の両親の死がきっかけかもしれない。

両親が死んだ森野をみんな「強い人」というが、それに対して神田が自分の考えを述べる。

みんなそう言ってます。そう思わせるようなやつだし。でも、そんなわけないでしょう?高校3年生で両親をいっぺんに失って、大丈夫なわけがない。誰の力も借りずに立ち直れるわけがない。それとも、この考え方って、間違ってますかね?人の死って、ましてや両親の死って。誰の力も借りずに一人で受け止めるものなんですかね?(本書より引用)

両親の死が神田にとって、森野を幼馴染以上の存在、守るべき存在にしたのではないだろうか。

それにしたって、神田は高校時代から森野のことをそんなに大切に思っていたのに大学卒業後海外に行っちゃうというのは少し違和感がある。

海外に行っている間に森野と一緒に行きたいと思ったのだろうか。

―感想―

~第2章~君といた~:かけがえのない人は側にいた人~

いじめられっ子の少年と少女が体育倉庫に閉じ込められた話。

偶然2人は再会するのだが少年は少女から逃げてしまう。

男は自分の少女との記憶を話していくうちに少女と向き合うことを決める。

ある人が悲しいとき、辛いとき、別の人は側にいるだけで本当の意味でその人の辛さや悲しさを理解できるわけではない。

でも、ある人にとっては、その人が側にいてくれたと思うことでその時の自分を許してやれる。

何もしてくれなくても、何もしてやれなくても、それでもたぶん、涙を流した人はそのとき誰かが隣にいたことで、何もできなかった人は涙を流した人の隣にいたことで、いつかその情景を許せるようになる、現に、今、頭に思い浮かべた彼と彼の親友との情景は、者悲しくもどこかぬくもりのあるシーンだった。(本書より引用)

体育倉庫に残された少女の心細い記憶は側にいた少年のおかげで心に残る暖かい記憶になったのだ。

自分も周りの人に助けられており、周りの人がいるから過去の自分を受け入れられるということに気づいた気がした。

一人で苦しんだ記憶は誰かが側にいてくれるだけでかけがえのない記憶になる。

不思議だけど暖かい気持ちになる。

自分も誰かが辛いとき、そっと寄り添ってあげられる人になりたいと思った。

~第3章~サークル~:自分を想ってくれる人から逃げたいという思い~

3章に登場するのはうつ病の女性から見た視点。

私も精神関係の疾患になったことがある。

自分が無力で仕方がない、でも登場人物の女性のような気持にはならなかった。

女性は責任感が強いのだと思う。

期待に応えなきゃいけない、みんなが頑張っているのだから自分も頑張らないといけないと言った風にだ。

だから、何もできない自分が恥ずかしい、世界に自分の居場所がないような気持になってしまう。

私は自分に自信はないが、必要以上の劣等感はないと思う。

自分ができないことはいくらでも思い浮かぶが皆だってそんなにうまくできてないだろうと考える。

だから何もできない自分でもいいんだと思える。
多少の背徳感はありますが…。

自分には自分の物事に対する見方があって考え方がある。

その考え方は尊重されるべきであり、だから自分には価値がある。

私のように考えるのがいいのか登場人物の女性のように考えたらいいのかは分からない。

ただ、同じ状況になっても考えることは全然違うなと感じた。

~第5章~時をつなぐ~:人の不思議なつながり~

「時をつなぐ」では人と人との不思議なつながりを描いている。

人はたくさんのコミュニティに属している。

世の中とは不思議なもので、「あるコミュニティ」に属しているある人が「別のコミュニティ」の考えを持ってきて、別の人も「あるコミュニティ」から「別のコミュニティ」にたまたま参加している。

全然関係ないと思っていた人が、思わぬ共通点でつながっていたりする。

私もこれを感じたことがある。

私の寮のOBが全然関係ないはずの私のバイト先の人を知っていたのだ。

それもバイトとは全然関係ない分野の繋がりだった。

人は繋がっているんだ。

不思議な気持ちになった。

自分のバイト先の人に影響を与えればその人経由で寮のOBにも影響を与えられたかもしれない。

自分のあずかり知らないところで自分が与えた影響が世の中を回っている。

もしかしたら自分の考えが回り回って自分に帰ってくるかもしれない。

人の繋がりの不思議さを感じた。

本性も不思議な人の繋がりを描いている。

―まとめ―

神田の森野への想いと、森野の神田への想い。

不器用な二人が一緒に歩いていくまでを周囲の人の目線から描いている。

MOMENT・WILLとは異なる二人の顔を見ることができる

1作目MOMENT

2作目WILL

3作目MEMORY

と、関連作がある。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする