目次
―手に取った理由―
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら」が正式なタイトルです。
以前話題になったので読んでみようと思いました。
―あらすじ―
公立高校野球部のマネージャーみなみは、ふとしたことでドラッカーの経営書『マネジメント』に出会います。はじめは難しさにとまどうのですが、野球部を強くするのにドラッカーが役立つことに気付きます。みなみと親友の夕紀、そして野球部の仲間たちが、ドラッカーの教えをもとに力を合わせて甲子園を目指す青春物語。(本書より引用)
―著者―
岩崎夏海 (いわさき なつみ)
1968年7月生まれ。東京都日野市出身。東京藝術大学美術学部建築学科卒。大学卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として「とんねるずのみなさんのおかげです」「ダウンタウンのごっつええ感じ」等のテレビ番組の制作に参加。アイドルグループ「AKB48」のプロデュース等にも携わる。その後、ゲームやウェブコンテンツの開発会社を経て、現在はマネジャーとして株式会社吉田正樹事務所に勤務(本書より引用)
―全体を通して―
~原理原則を正しく理解すること~
「マネジメント」の内容を紹介した本であると同時に小説としても楽しめる内容になっている。
この本ではドラッカーの「マネジメント」に沿って野球部を改善することで甲子園を目指せるまでのチームに成長させる物語である。
「ドラッカー」の本は私も聞いたことくらいしかなかったのだが、営利企業が使うものだと思っていた。
高校野球にこのように応用ができるのかと、読んでいて楽しかった。
私は全ての物事について大切なのは以下の3つだと思っている
・原理・原則を理解すること
・常に初心を忘れないこと
・継続すること
「マネジメント」はこの中で「原理・原則を理解すること」に大きく寄与している。
原理・原則を正しく理解せずに進むと効率が悪くなってしまったり、物事に取り組んだ後の満足度が低くなってしまう。
原理・原則を理解する早道は本を読むことだと思う。
本は年長者が記した貴重な体験談が含まれているので、効率的に重要なことが学べる。
しかも、評価されている本はその内容も概ね正しいということだ。
正しい情報を素早く得ることができる読書は重要だ。
私も昔成功者の習慣をまとめた「7つの習慣」という本を読んだことがある。
身にはならなかったかもしれないが、良いこと書いてあるな、くらいには思った。
本当に本書の内容を実行しようと思ったら本を常に手元において何度も読み返す必要があるだろう。
主人公のみなみも原理・原則を「マネジメント」から読み取ってそれを野球部に応用している。
ただ、主人公のような行動規範を持ってもうまくいく人は多くない。
それは、どんなに良質な本が世に出ても成功者が爆発的に増えるわけではないことと同じだ。
皆、続けることができないのだ。
主人公や周りの部員のように、設定した目標に向かってコツコツと努力することは容易ではない。
―感想―
~マネジャーの才能と組織の色~
マネジャーの才能として以下のように述べられている。
マネジャーにできなければならないことは、そのほとんどが教わらなくとも学ぶことができる。しかし、学ぶことのできない資質、後天的に獲得することのできない資質、始めから身につけていなければならない資質が、一つだけある。才能ではない。真摯さである(本書より引用)
真面目さ・素直さとでもいいかえられるだろうか。
本文中で主人公のみなみが「マネジメント」に頼らず自分の意思を表明する場面がある。
それでも、たとえ負けることになろうとも、彼の成長を信じて使い続けることが、私はマネジメントのすることだと思うんです(本書より引用)
これは主人公が真摯さを見せた場面だと思う。
選手に対して真摯だったのだ。
結果に対して真摯であるなら、負けない最善の手法を取るべきかもしれない。
しかし、主人公の行動も真摯であったはずだ。
私はこのような差し迫った状況で何に重きを置くかが組織の色になるのではないかと考える。
世界に大企業は数あるが、全く同じ考え方で成功している企業は一つもないはずである。
この組織の色こそが組織の個性でありそれに共感できる人が集まって組織を伸ばしていくのだと思う。
~体育会の有利さ~
運動部出身の人間の、多くの場面で重宝されたり、肩書として重んじられたリした。その最も顕著な例が、企業の採用だった。企業が人材を採用する際、運動部に所属していたという経歴は大きなアドバンテージになった。(本書より引用)
確かにそうだなと思う。でも高校生でそれに気づいて行動するのは凄すぎると思う。
私は体育会系ではない、根っからの文科系だ。
生まれ変わっても文科系でいたいけど、体育会系はやっぱり社会に出て有利なのは間違いないと思う。
もし、子供ができたら体育会系を進めると思う。
自分の子供なので思考は文科系だろうが、スポーツを楽しいと思えば続けてくれるかもしれない。
~部活に何を求めるのか~
そうよ!「感動」よ!顧客が野球部に求めていたのものは「感動」だったのよ!それは、親も、先生も、学校も、都も、高野連も、全国のファンも、そして私たち部員も、みんなそう!みんな、野球部に「感動」を求めてるの!
なるほどな、と思った。
私はみなみが探していた「野球部の定義」は企業のキャッチコピーのようなものだというイメージを持っている。
定義が細かすぎると、実現は簡単だが成長にはつながらない。
抽象的すぎると、何を言っているのか分からなくなる。
「感動」という言葉は人によって定義は異なるだろうが、感動を目標にして行うことは大抵客観的にみても良いことだ。
しかも、万一甲子園優勝ということになっても野球部の求めることと結果にズレがない。
~偶然なんてない~
周りからは奇跡だ奇跡だって言われてるけど、奇跡なんかじゃない。私たちは、やるべきことをやって、ここまで来たんだ。それは夕紀が一番分かってるじゃない。(本書より引用)
自信は自分がやるべき努力をきちんとしたからこそ生まれてくるものだ。
程高(主人公が通う高校)の野球部は自信を持っていいし、持つべきだ。
私も、やるべきことをきちんとやって勝負に臨める人間になりたい。
―まとめ―
「マネジメント」の概要とその活用術を知ることもできるし、小説としても楽しめる作品。
大学生や新社会人など「マネジメント」そのものを読むのに少し抵抗がある人にとっては良い入門書だと感じる。